
ChatGPTのような生成AIがさまざまな業務で使われるようになり、AIの活用を身近に感じる場面が増えました。シフト作成についても、AIで自動化できないかと考える人もいるかもしれません。
実際に、シフト作成アプリの中には、シフト作成を自動化する仕組みにAIを組み込んでいるものがあります。AIはシフト作成を自動化するための手法の一つですが、AI以外の方法でもシフト作成を自動化することはできます。では、AIを使う場合と使わない場合では、何が違うのでしょうか。
この記事では、シフト作成の自動化におけるAIの仕組みと、このようなアプリを選ぶ際にどのような点を確認すべきかについて解説します。
目次
1. シフト作成で使われるAIの仕組み
シフト作成アプリでAIが使われる場合、多くは、シフトの自動割り振りに使うアルゴリズムにAIを活用しています。ここでいうアルゴリズムとは、スタッフ、勤務区分、日付、必要人数、勤務希望、職場のルールなどをもとに、条件に合うシフトの組み合わせを探す手順や方法のことです。
シフト作成では、単に空いている日にスタッフを入れていくだけではありません。ある日に特定のスタッフを入れると、別の日の人員が足りなくなったり、連続勤務の条件にかかったり、資格者の配置条件を満たせなくなったりすることがあります。そのため、シフト作成では、勤務表全体として条件に合う組み合わせを探す必要があります。AIは、この組み合わせを探したり、候補を評価したり、よりよい割り振りを見つけたりするための手法として使われることがあります。
この場合のAIは、ChatGPTのような生成AIに限りません。AIというと、生成AIのようにチャットで質問や指示をするものをイメージするかもしれませんが、シフト作成アプリで使われるAIは、必ずしもそのような仕組みとは限りません。
生成AIを使ったシフト作成については、以下の記事で詳しく解説しています。

ここからは、シフト作成の自動割り振りに使われるアルゴリズムと、その中でAIがどのような役割を持つのかを見ていきます。
2. シフト作成の自動化に使われるアルゴリズム
シフト作成を自動化するには、膨大な勤務の組み合わせの中から、設定された条件に合う割り振りを探す必要があります。そのため、シフト作成アプリでは、どのような手順や方法で組み合わせを探すかを定めたアルゴリズムが使われます。
自動割り振りに使われる手法は一つではありません。組み合わせ最適化、制約充足、ヒューリスティック、ルールベースの処理など、さまざまな方法があります。AIを活用して候補を探索したり評価したりする方法も、その一つです。また、AI自体も単一の手法を指すものではなく、複数の技術や考え方を含む広い概念です。そのため、同じようにAIを使っているアプリでも、組み合わせの探し方や処理の進め方は異なる場合があります。
つまり、AIを使う場合と使わない場合の違いは、シフトを自動で割り振るかどうかではなく、自動割り振りを実現するために、どのような手法やアルゴリズムを使うかという点にあります。
次のセクションでは、こうした手法の中でAIを使うことによって、シフト作成の性能がどのように変わるのかを見ていきます。
3. AIを使うとシフト作成の性能は上がるのか
AIは、多数の候補から有望な組み合わせを効率よく探索したり、候補を評価したりするために活用されます。特に、スタッフ数が多い場合や条件が複雑な場合には、探索の効率や割り振りの質を高める手法として有効になる可能性があります。
実際に、シフト作成や人員配置の研究では、AIを活用したモデルが高い性能を示したという報告もあります。ただし、AIを使っているからといって、常に他の方法より高性能になるとは限りません。AI以外の手法でも、条件や規模によっては高い性能を発揮することがあります。
また、シフト作成に使われるアルゴリズムの性能を評価することは簡単ではありません。同じ条件であれば、処理時間や条件に合う勤務表を見つけられるかを比較できます。一方で、実際のシフト作成の条件は職場ごとに異なります。そのため、ある条件で高い性能を示したアルゴリズムが、別の職場でも同じように高い性能を発揮するとは限りません。
アルゴリズムの性能は高いに越したことはありません。ただし、実際に利用するうえで最も重要なのは、自分の職場の条件でシフトを作成できることです。
4. シフト作成の自動化にはルール設定が重要
シフト作成を自動化するには、まず職場のシフト作成ルールに対応していることが前提となります。
どれだけ高性能なAIやアルゴリズムを使っていても、必要なルールに対応していなければ、職場の運用に即したシフトは作成できません。シフト作成アプリでは、アルゴリズムの性能だけでなく、どのようなルールを設定できるかも重要です。ただし、個別のルールに対応しているからといって、複数の条件を同時に考慮したシフトを必ず作成できるとは限りません。条件を組み合わせるほど、条件に合う割り振りを探す難易度は高くなります。ルールを一つずつ設定できることと、それらを組み合わせた条件で実際にシフトを作成できることは、また別のことです。
前のセクションで説明したように、シフト作成の条件は職場ごとに異なります。必要なルールに対応しているかを確認するだけでなく、実際の職場の条件を設定し、その条件でシフトを作成できるかを試してみることが重要です。また、必要なルールに対応していても、アプリの設定方法が複雑で使いこなせなければ、実際の運用にはつながりません。特にルールが多い職場では、必要な条件を整理し、アプリに正しく設定する作業そのものが負担になることがあります。
このようなルールへの対応や設定のしやすさは、自動割り振りに使われるAIやアルゴリズムの性能だけで解決できる問題ではありません。
それなら、生成AIに職場の条件を文章で伝えれば、柔軟にルールを設定できるのではないかと思うかもしれません。しかし、複雑な条件を正確に言語化して伝え、出力された内容が意図どおりかを確認することには、別の難しさがあります。
生成AIを使ってシフト作成の条件を伝える場合の課題については、以下の記事で詳しく解説しています。

5. シフト作成アプリを選ぶときのポイント
AIを活用することで、自動割り振りの性能が高まる場合があります。そのため、AIを取り入れたシフト作成アプリは、有力な選択肢の一つです。
ただし、アルゴリズムの性能が高くても、職場で必要なルールに対応していなかったり、設定が難しくて使いこなせなかったりすれば、実際のシフト作成には利用できません。また、必要な条件で問題なくシフトを作成できるのであれば、処理速度やアルゴリズム性能のわずかな差よりも、設定のしやすさ、価格、導入の負担などが重要な判断材料になる場合もあります。
シフト作成アプリを検討するときは、主に次の点を確認することをお勧めします。
- 職場で必要なルールに対応しているか
- ルールを分かりやすく設定・管理できるか
- 複数の条件を設定した状態でシフトを作成できるか
- シフトを作成できない場合に原因を確認できるか
- 作成後の確認や修正を行いやすいか
- 価格や導入の負担が利用目的に合っているか
中でも重要なのは、実際の職場の条件を設定し、その条件でシフトを作成できるかを確認することです。機能の説明や特定の条件での性能だけでは、自分の職場でも同じように利用できるかまでは分かりません。
アプリを選ぶ際は、AIを使っているかどうかだけで判断するのではなく、必要なルールに対応しているか、実際の職場の条件でシフトを作成できるかを確認することが重要です。
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監修者:水口 泰介
アサイノ・テクノロジーズ株式会社 代表
大学病院の医師として、部署内で約60名のスタッフのシフト作成を担当した経験をもとに、シフト作成支援アプリケーションAssignoを開発。シフト作成の考え方や判断基準を整理・体系化し、誰でも使える形でノウハウを仕組み化することに取り組んでいる。